Steam 10月ネクストフェス、出展ゲームの36.4%が生成AI使用を申告:過去最高の数字と「申告制度」の意味が揺らぐとき#
文 / 无边(NTGame編集部 · AI×ゲーム観察コラム)
皆さんこんにちは、无边です。
10月ネクストフェス(Steam Next Fest)が10月19日に開幕したその日、いつものように統計サイトの数字をネタ帳に書き写していました。書き写す途中で手が止まりました。出展ゲームは7145本で過去最多。そのうち約2596本が生成AIの使用を申告しており、その割合は36.4%。この割合、6月の開催時は19%強でした——たった4ヶ月で約16ポイント上昇し、ほぼ倍増です。
AI観察を続けて数年、さまざまな指標の過去最高更新には慣れましたが、「申告率が4ヶ月でほぼ倍増」という一点だけは、何度も見直してしまいました。理由は「AIでゲームを作る人が増えた」ことを証明したからではありません——その方向自体は想定内です——むしろ、もっと根本的なことが揺らぎ始めたからです。AIコンテンツ申告という制度設計は、もともとプレイヤーが「それを頼りに選別する」ためのものでした。しかし申告したゲームが棚の4割近くに達した今、このラベルは何を選び出せるのでしょうか。『花冠戦略』のプロデューサー・潇潇(シャオシャオ)は今大会の期間中、私がそのままネタ帳に書き留めた言葉を残しています。「AIの流れは避けられない。今後この割合がさらに上がれば、AIコンテンツ申告という選択肢は意味を失うかもしれない。ユーザーは最終的にクオリティだけで判断するようになるだろう」
まず集計の前提を整理します。前回の記事「Steam ネクストフェス、デモ8202本で過去最多:AI供給過剰、プレイヤーの反発、クローン懸念下の試遊自粛」では今大会の現象面——プレイヤーの反発、同質化への不満、開発者による公開試遊の自粛——を扱いました。本稿はその分担先として、データそのものと申告制度に焦点を当てます。36.4%という数字がどう出てきたのか、なぜこれほど速く上昇したのか、このラベルの選別価値に何が起きているのか、そして申告制度に現れつつある2つの「機能不全」の形について。文中の具体的な数字・日付・引用はすべて2026年10月25日時点で検索した複数メディアの公開報道に基づきます(主な集計は触楽週報が引用したSteamDB、すなわちSteamデータ統計サイトの数値)。集計方法の違いは随所で明記し、公式の見解がない部分や集計不能な部分はその旨を明示し、推測は加えません。
一、まずデータから:7145本、36.4%、そしてその周辺にある4つの集計#
1.1 主要数字の一覧表#
まず今大会の主要な統計を並べます。
| 項目 | データ | 出典 |
|---|---|---|
| 開催期間 | 2026年10月19日〜26日、出展ゲームはすべてプレイ可能なデモが必要 | PC Guide(テックメディア)が報じた公式の開催要項 |
| 出展ゲーム総数 | 7145本、歴代最多 | SteamDB(Steamデータ統計サイト)の集計を触楽週報が転引 |
| 生成AI使用を申告 | 約2596本、36.4% | 同上 |
| 6月ネクストフェスの申告率 | 19%強 | TheGamer(ゲームメディア)による6月の同方法集計 |
| 4ヶ月での上昇幅 | 約16ポイント、ほぼ倍増 | 上記2つの割合に基づく |
36.4%は単体ではただのパーセンテージですが、棚の文脈に置くと実感がわきます。今大会の出展ゲーム100本のうち36本以上が、ストアページで開発過程に生成AIを使ったと申告している。10本に約4本です。6月の時点ではこの数字は「19%強」——当時は申告は少数派のシグナルでしたが、4ヶ月後には棚で無視できない多数派の兆候になっています。
1.2 5つの集計を並べて見る#
こうしたデータの統計では、数字そのものより集計方法が重要です。同じ大会でも統計元によって数字に微妙な差があります。確認できた集計をすべて並べます。
| 統計元 | 集計数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 触楽週報が引用したSteamDB | 出展7145本、うち約2596本(36.4%)がAI使用を申告 | 本稿の主集計 |
| PC Guideの独自集計 | 7145本からAIラベル付きを除くと4552本が残り、申告付きは2593本、約36% | 同方法での独立検証 |
| TheGamerの集計 | 2595本(36%) | 同方法での独立検証 |
| ロシアメディアが引用した10月21日時点のスナップショット | SteamDB掲載は7217本、うち2628本(36.4%)にAIマーク | スナップショット時点が異なり、数値はやや高め |
| GameDiscoverCo(ゲームデータ調査会社、6月集計) | デモ4382本のうち1163本(26.5%)がAI使用を申告 | サンプルが異なり、19%と混同しないこと |
いくつか補足します。第一に、10月の3つの集計は互いに整合しています。2593、2595、約2596という3つの数字のずれは一桁台で、36%と36.4%の違いは四捨五入の範囲。結論は安定しています。第二に、ロシアメディアが引用した10月21日時点のスナップショットは、2つの絶対数で主集計と食い違います(7217本・2628本 対 7145本・約2596本)が、割合は同じく36.4%です。スナップショットの時点が異なり、出展リストは開催期間中に動的に変動するため、この程度のずれはトレンドの結論に影響しません。第三に、6月のベースラインには2つの集計があります。TheGamerの「19%強」とGameDiscoverCoの26.5%で、サンプルが異なります。本稿では本文中、前者を36.4%との比較に統一して用い、後者は集計の備考としてのみ扱います。第四に、AIラベルを除外した残りのゲーム数について、英語メディアの集計範囲は4549〜4552本です。
どの集計を採っても結論は同じです。4ヶ月で申告率は19%強から36.4%へ、2割弱から3分の1超へ上昇しました。これはノイズではなく、トレンドです。
1.3 絶対数を直接比較できない理由#
ついでに、データを扱う者なら必ず抱く疑問に答えておきます。2ヶ月分の割合があるなら「絶対数の増加」は計算できないのか。できません。その理由を説明する価値があります。
- TheGamerの6月集計は割合(19%強)のみで、当該大会の出展総数と申告総数の絶対数が示されておらず、19%が何本に相当するのか不明です。
- GameDiscoverCoの6月集計には完全な絶対数があります(デモ4382本、申告1163本)が、サンプルがTheGamerと異なります。そこから割り出せる割合は26.5%で、前者の19%ともとより一致しません。1163本を今大会の約2596本と無理に比較するのは、目盛りの違う2本の物差しで距離を測るようなものです。
- 今大会の7145本と約2596本はSteamDBの出展リスト集計によるものです。6月に同方法のスナップショットがなければ、割合の前後比較は「それぞれの割合」の間でしか行えません。
そのため本稿では「割合対割合」(19% 対 36.4%)の比較のみを行い、絶対数の比較は空白のままにします。手抜きではなく、2つの集計を並べた上で唯一誠実なやり方です。ちなみに「出展リストが動的に変動する」という点は前述の通りです(ロシアメディアのスナップショット7217本 対 主集計7145本)。この種の統計にはもともと時点属性が伴うことを念頭に置くべきで、一桁単位の精度を求める期間比較には常に注意が必要です。
二、なぜ割合が上がったのか:供給側の生産能力ロジック#
2.1 申告制度の仕組みと、36.4%が意味するもの#
この数字を理解するには、まず申告制度そのものの限界を見る必要があります。Valve(ヴァルヴ)のストアページに関する要件は次の通りです。
| 使用形態 | 申告の要否 |
|---|---|
| プレイヤー向けAI生成コンテンツ:画像、音声、テキスト、ローカライズ、ゲーム内リアルタイム生成 | 必要。ストアページでの申告が必須 |
| 内部ワークフローのみでAIを使用(最終製品には含まれない) | 不要 |
| 検出・検証の仕組み | 自動検出ツールなし。開発者の自主申告に依存 |
3行目が制度全体で最も脆弱な部分です。自動検出がないということは、申告が完全に自主性の上に成り立っているということです。ここから2つの直接的な帰結が導かれます。第一に、36.4%は上限ではなく下限であり、実際の割合はそれより高い可能性がありますが、どれほど高いかは集計不能です。第二に、「内部プロセスのみでAIを使った」ゲームと「まったくAIを使っていない」ゲームは、ストアページ上ではまったく同じに見え、プレイヤーには区別がつきません。
2.2 生産のハードル低下:出展数と申告率が同時に過去最高に#
割合がこれほど速く上がった背景として、供給側に避けて通れない事情があります。デモの制作ハードルが下がっているのです。今大会期間中の業界インタビューでは、次のような見解が示されました。IGROPROM(ロシアのゲーム業界団体)CEOのYulia Tishina氏は、以前はインディーゲームのバーティカルスライスを作るのに4〜6人が数ヶ月かかっていたところ、現在は1〜2人が1ヶ月半〜2ヶ月で完成できるようになり、コンセプトアート、テクスチャ、UI、コードの土台、仮ボイス、翻訳といった工程がいずれもAIで高速化されていると述べました。またAstrum Entertainmentのゲーム開発ディレクター、Anastasia Dzhioeva氏は、生成AIによって小規模チームがより低コストでプロジェクトを進められるようになったが、「始めやすくなった一方で、商業的な成功はより難しくなった」と述べています。
集計の前提を明確にしておきます。これは2人の実務者の見解・推定であり、体系的な統計ではありません。本稿では見解として引用します。ただし、これを2つの硬いデータと並べると、ロジックは整合します。
- 出展数が過去最多:7145本、歴代最多。デモを作れるチームが増えれば、棚は自然と長くなります。
- 申告率が過去最高:36.4%。コンセプトアート、テクスチャ、UI、ボイス、翻訳はまさに「プレイヤー向けコンテンツ」の高頻度カテゴリです。これらの工程がAIで高速化されたということは、製品にAI生成コンテンツが残る確率もそれに伴って上がるということです。
2つの曲線は同じコインの裏表です。生産のハードル低下が出展総数を押し上げると同時に、その中の「AIを使った作品」の絶対数と割合も押し上げました。出展数の過去最高と申告率の過去最高は、2つの出来事というより、同じ出来事の2つの読み取り値なのです。
2.3 申告カテゴリと高速化工程:対応表#
より興味深いのは、2つのリストを並べることです。ひとつは申告制度がカバーするカテゴリ(Valveが申告を求める「プレイヤー向けAI生成コンテンツ」)、もうひとつはTishina氏の見解の中でAIにより高速化された生産工程です。この対応関係は私が分析として整理したものであり、統計的な結論ではありませんが、対応の整い方には注目に値するものがあります。
| 申告制度がカバーするカテゴリ | 見解の中でAIにより高速化された工程 | 両者の対応関係 |
|---|---|---|
| 画像 | コンセプトアート、テクスチャ、UI | 直接対応:画像系の生成コンテンツはまさにコンセプトアートとテクスチャ工程の産出物 |
| 音声 | 仮ボイス | 直接対応:ボイスは音声系コンテンツ |
| テキスト | 翻訳(およびテキストコンテンツ) | 直接対応:翻訳はテキスト系コンテンツ |
| ローカライズ | 翻訳 | 直接対応:ローカライズの主な作業量は翻訳 |
| ゲーム内リアルタイム生成 | —— | 見解のリストには含まれず、申告カテゴリの中ではより後段の形態 |
| —— | コードの土台 | 間接対応:コードが「プレイヤー向けコンテンツ」に含まれない場合、制度上は申告不要 |
この表は少なくとも2つのことを示しています。第一に、見解の中でAIにより高速化された工程は、ほぼすべて申告制度のカバー範囲内に収まっています。生産の高速化と申告率の上昇の間には、筋の通った伝達経路が存在します。高速化された工程が何を産出するか、ストアページにはそれが申告されるのです。第二に、唯一の例外は「コードの土台」です。申告制度の限界に従えば、内部プロセスでのAI使用は申告不要です。つまり、実際にAIによって再構築された生産工程は、ストアページに申告されたリストよりも広いはずです。これは2.1の結論を改めて裏付けています。36.4%は下限であり、その下限の上にある暗部は、まさに制度が申告を求めない側に潜んでいるのです。
三、「申告」の情報量の希釈:機能不全に陥りつつあるフィルター#
3.1 ラベルの選別価値は、割合の上昇とともに減衰する#
申告制度の価値はすべて、ひとつの前提の上に成り立っています。申告者が少数であること。少数派のラベルにこそ識別力があります。このロジックをデータに当てはめると、減衰の経路は明快です。次の表の後半は推論であり統計ではないことを、明確に記しておきます。
| 段階 | 申告率(または仮定) | ラベルの選別価値 |
|---|---|---|
| 6月ネクストフェス(統計) | 19%強 | 出展ゲームの大半が未申告で、「AI申告あり」は顕著な少数派シグナル |
| 今大会(統計) | 36.4% | 3分の1超が申告し、シグナルの顕著さが低下し始める |
| 割合が過半を超えると仮定(推論) | 出展ゲームの多数が申告 | 申告がデフォルト状態に近づき、ラベルの識別対象が「多数派」から「少数の未申告者」へと縮小する |
この表が言いたいのは「申告に意味がない」ということではなく、その有用性はカバー率の上昇とともに逓減するということです。申告者が少数のうちは「申告あり」が有効なシグナルです。しかし申告者が半数に近づき、過半を超えると、有効なシグナルはむしろ「申告なし」のほうになります。そして制度が自主申告に依存しているため、「申告なし」には「本当に使っていない」場合と「使っているのに申告していない」場合が混在しており、こちらのシグナルの質も疑わしい。要するに、このフィルターは両端から漏れているのです。
今大会の数字でこの減衰プロセスをもう一度たどります。6月、19%強——出展ゲームの約5本に1本足らずがAI使用を申告しており、プレイヤーが申告ラベルを目にしたとき、それが棚の少数派である可能性が高く、ラベルの「識別機能」は「排除機能」を大きく上回っていました。今大会、36.4%——3分の1超。プレイヤーが棚を回って申告ラベルに出くわす頻度はほぼ倍になりました(割合ベースであり、絶対数ではありません)。ラベルは「少数派の識別」から「常態の記述」へと滑り始めています。そして過半を超えたとき、「AIを使った」はもはや識別情報ではなくなり、「AIを使っていない」のほうが特別に標識を要する少数派になります。しかし制度は「未申告者」にいかなる検証手段も提供していません。そのときプレイヤーの手元には、頼れる少数派ラベルすら残らないのです。フィルターの機能不全は突然の故障ではなく、このように一マスずつの鈍化として進行します。
3.2 潇潇の命題:申告がデフォルトになったとき、選別はクオリティ判断へ回帰する#
これこそ『花冠戦略』プロデューサー・潇潇のあの言葉の制度的ロジックです。彼女の原話はこうです。「AIの流れは避けられない。今後この割合がさらに上がれば、AIコンテンツ申告という選択肢は意味を失うかもしれない。ユーザーは最終的にクオリティだけで判断するようになるだろう」
この言葉を分解すると、実は3つの判断の重なりです。トレンド判断——割合の上昇は避けられない。制度判断——申告という選択肢の情報量は希釈され、やがて意味を失う。代替判断——最終的に選別機能を担うのは、クオリティそのものしかない。今大会の36.4%というデータと照らすと、1つ目の判断は検証されつつあり、2つ目の判断の推論経路は上の表の通り、3つ目の判断はすでに今大会のランキングに兆候が現れています(次節で展開します)。
AIシステムを長年追いかけてきた者として、一言添えたいのは、これはゲーム業界固有のジレンマではないということです。あらゆる「自主申告型」の情報制度——原産地表示、成分表示、コンテンツレーティング——は「申告という行為自体が情報を運ぶ」という前提に依存しています。申告のカバー率が普及水準に近づくと、制度は「フィルター」から「台帳」へと退化します。ゲーム業界の特異性は、この段階に到達した速さです。4ヶ月で19%から36.4%へ。
3.3 下限のジレンマ:集計不能な暗数#
さらに厄介な問題が残っています。私たちは「現在の実際の割合」すら確認できないのです。制度に自動検出がなく自主申告に依存しているということは、2つのことを意味します。実際の割合は36.4%より高い可能性があるが、どれほど高いかは集計不能。そして未申告のゲームには、まったくAIを使っていないものと、使っているのに申告していないものが混在しており、両者は区別できません。Valveが申告制度を厳格化するのか、フィルターを追加するのか、未申告者を処罰するのかについては、執筆時点でいかなる公式見解もなく、完全に開かれた問題です。本稿で予測は行いません。プレイヤー側の対応(「AI除外」フィルターの要望)と開発者側の対応(公開試遊の自粛による模倣防止)は前回の記事で詳述しましたが、次節では制度の観点からもう一度見てみます。それらはまさに申告制度の「機能不全」の2つの形を構成しているのです。
この「暗数のジレンマ」の構造を3層に分解すると、問題がどのマスにあるのか一目瞭然です。
| 層 | 制度設計 | 実際の状態 |
|---|---|---|
| 申告 | 開発者の自主性に依存、自動検出なし | 申告の有無は検証不能、申告へのインセンティブを欠く |
| 統計 | 第三者(SteamDBなど)は「申告済み」しか数えられない | 36.4%は下限、実際のカバー率は不明 |
| 消費 | プレイヤーはストアページの申告声明を見られる | 「AI除外」フィルターなし、「未申告」をさらに区別する手段がない |
統計・申告・消費の3層は、いずれも「開発者が正直に申告する」という仮定の上に成り立っており、制度はこの仮定にいかなる検証ツールも提供していません。選別システムの入力側が検証不能で、出力側が操作不能であれば、中間の数字(36.4%)がどれほど正確でも、それはトレンドの読み取り値としてしか扱えず、選別の根拠にはなりえません。これが本節のタイトルにある「暗数」という言葉の重みです。私たちが知らない部分は、知っている部分より大きいかもしれないのです。
四、制度が解消される2つの形:一方ではセールスポイント化、他方では回避化#
4.1 形態その1:AIフリーがセールスポイントになり、申告は商業的ペナルティになっていない#
今大会には興味深い緊張関係があります。TheDailyGame(TheGamerの調査を引用)の分析によると、売上上位のゲームはAI不使用の作品が多い——プレイヤーは購買行動によって「AIを使わない作品」を報奨しているように見えます。しかし同時に、全体の申告率は上昇を続けており、AI使用を申告したゲームが普遍的な商業的ペナルティを受けた様子はありません。
この2つの事実を並べると、読み取れる情報はこうです。プレイヤーの反発は本物です(あるプレイヤーはイベントがAIによって「完全に台無しにされている」と述べています)。しかし、それが棚全体を覆う購買判断の基準にはまだ変換されていません。AIフリーはニッチなスタンスから、識別可能なセールスポイントへと変わりつつあります。一方、申告ラベルそのものは、依然として「評価」ではなく「告知」の位置にとどまっています。これこそ情報量希釈のもうひとつの現れです。プレイヤーがラベルだけで選別を完了できないとき、彼らはランキング、口コミ、ストアページ以外の情報で自力に判断を再構築するしかありません。選別コストはプレイヤーの側に転嫁されているのです。
4.2 反発の実際の代償:幕府将軍2リマスター版がストアから姿を消した#
プレイヤーの反発には具体的な代償が伴うのか。最近のサンプルがひとつあります。ネクストフェス開幕の数日前、『Total War: SHOGUN 2』のリマスター版がAIによるアップスケール素材をめぐって「圧倒的に不評」(Overwhelmingly Negative)となり、最終的にSteamから引き下げられ、原版に置き換えられました。AI論争が深刻化し、パブリッシャーが直接、ストアの枠をひとつ失う事態になったのです。
この出来事の意義は、反発の天井がどこにあるかを示した点にあります。「AIラベルがついているだけで売れない」のではなく、「AIの使い方がベテランプレイヤーに裏切られたと感じさせた」とき、反発は製品全体をひっくり返すに足るものになる、ということです。申告制度とはこれは別の話です。リマスター版の論争は素材の品質と愛着への期待に集中しており、申告の有無ではありません。当サイトのChasunによる「SEGA、2日で緊急下架『幕府将軍2 コンプリート版』:AIリマスター路線の初の大失敗」が事件の全経緯を詳述しているので、ここでは繰り返しません。本稿にとっての含意だけを取り上げます。プレイヤーのAIコンテンツへの受容度は、抽象的な「あり」か「なし」かではなく、製品への期待と強く結びついている。この「クオリティ判断優先」の事例は、まさに潇潇の命題の注釈なのです。
4.3 形態その2:公開デモが取りやめに、申告データが観察窓口を失いつつある#
4.1が申告制度の「セールスポイント化」だとすれば、もうひとつの解消の形はより隠蔽的です。データの源流が能動的に狭められています。今大会での2つの動きです。『Moonlighter』の開発元Digital Sun(デジタルサン)は新作『ReVamp』の公開試遊を行わず、先にコミュニティ向けの限定テストを実施することを決めました。公開デモが素早く分解され、AIで模倣されることを懸念してのことです。またAlliance Artsは、10月19日に予定されていた公開デモ『Drunken Goddess Reflux』を取りやめ、プライベートな試遊に変更し、AIによる模倣を懸念すると明言しました。表面的には模倣防止の自衛(前回の記事で動機と仕組みを詳述しました)ですが、申告制度の枠組みで見ると、これらはもうひとつのものを削ぎ落としています。公開でプレイ可能なバージョンです。
プレイヤーがあるゲームのAI使用を観察する手段の多くは、試遊の過程での直接的な体験から得られます。テクスチャの手触り、ボイスの痕跡、テキストの文体。公開デモが減るほど、この体験に基づく判断は減り、プレイヤーが申告情報をクロスチェックする能力は弱まります。模倣防止と観察防止は、この2つの事例では同じ行為の裏表なのです。
4.4 プレイヤー側:選びきれない棚#
最後にプレイヤー側の状況を整理します。Redditコミュニティで今大会期間中に集中していた不満は2点です。出展ゲームが多すぎること、同質化が深刻なこと。コミュニティは「AI除外」フィルターの追加を求めていますが、ネクストフェスには現在、AIラベルのフィルターがありません。つまり、情報量の希釈を考慮しなくても、プレイヤーは今この瞬間、「ラベルで除外する」という最も基本的な操作すら実行できないのです。選びたいのに、道具がない。割合がさらに上がれば、仮に道具ができたとしても、ラベルそのものの価値は減衰しています。道具の欠如とシグナルの減衰が重なったものが、プレイヤーが直面している現状の全体像です。選びきれない棚と、ますます区別がつきにくくなる商品の山です。
プレイヤーが棚の前で実際にたどる意思決定プロセスをなぞれば、道具の欠如がどの段階で引っかかっているのかが具体的にわかります。
- 第一段階、数を見る:出展ゲーム7145本、歴代最多。回りきれない。まず選別ツールの存在が要る。
- 第二段階、除外したい:コミュニティは「AI除外」フィルターを求めている。制度はAIラベルフィルターを提供していない。この道は通れない。
- 第三段階、次善の策として申告ラベルで手動識別——36.4%という割合は、約2600本近くのストアページ声明を手動で確認する必要があることを意味し、コストが高すぎて非現実的。
- 第四段階、さらに一歩引いて、ランキングと口コミに頼る——売上上位にAI不使用作品が多いことはある種の粗い代理シグナルを提供するが、ランキングはロングテールをカバーできない。
4段階を終えて、プレイヤーは最後の段階へ押し戻されます。ランキングと口コミで粗く選び、試遊で細かく選ぶ。これはまさに4.1で観察された現象を説明しています。売上上位にAI不使用作品が多いことと、申告率の過去最高が矛盾なく併存しているのは、選別が消えたのではなく、「制度が提供するラベル」から「プレイヤーが自前で構築する、より高コストなシグナル」へと退いたからなのです。
4.5 3つの機能不全形態の対照#
本節をまとめます。申告制度の解消は今大会において3つの形で現れており、それぞれ明確な事実のアンカーを持っています。
| 形態 | 仕組み | 今大会の事実アンカー |
|---|---|---|
| シグナルの希釈 | 申告のカバー率が上昇し、ラベルの識別力が低下 | 19% → 36.4%、4ヶ月でほぼ倍増 |
| セールスポイント化 | プレイヤーがAI不使用作品を逆に報奨し、ラベルは「評価」ではなく「告知」にとどまる | 売上上位はAI不使用作品が多く、申告は普遍的な商業的ペナルティになっていない |
| 源流の回避 | 公開デモがAI模倣防止のため取りやめに、観察窓口が狭まる | Digital Sunが新作の公開試遊を見送り。Alliance Artsが公開デモを取りやめプライベート試遊に変更 |
3つの形態は同じ終着点を指していますが、経路は異なります。シグナルの希釈はデータ自体の減衰、セールスポイント化は消費側での再評価、源流の回避は供給側による観察窓口の能動的な縮小です。3つが重なった効果として、申告制度は「選別インフラ」から「単なる登録手続き」へと滑り落ちています。そしてこの滑落の過程を、